海外で働くため、送出機関に勤めている親戚に相談したところ「日本の建設業で技術を身につけてみては？」とアドバイスをもらい、それが今につながっています。当時は日本という国について、ほとんど知らなくて「どんな国だろう？」と不安ながらも海外での生活に胸を高鳴らせていました。

　力仕事をしたことがなかったので筋力がなく、道具や鉄筋が重くて「これは大変な仕事に就いてしまったぞ…」と思ったのが正直な気持ちです（笑）。

　火を扱う仕事でもあるので、炎天下での作業になると、ものすごく暑い。当時は手元作業ばかりだったとはいえ、慣れるまでは毎日ヘトヘトでした。

　日本語はおぼつかず、仕事も半人前で、この先が不安でした。そんなときに出会ったのが、先輩の長瀬さんです。仕事のことや、生活面についても何でも相談でき、日本語もたくさん教えてくれて、本当にやさしく接してくれました。溶接の基礎技術が身につき、日本語の日常会話が上達したのは長瀬さんのおかげです。今は長瀬さんのことは尊敬を込めて「お父さん」と呼んでいます。

　少しずつ工事の流れがわかるようになってきて、作業スピードもアップしていきました。道具がないときは自分で探せるようになり、材料が足りないときや鉄筋の配置が違うときは、僕一人で鉄筋業者さんと相談することもできるようにもなりました。日本語で話したことが、相手に「OK、わかったよ」と返事してもらえると「やった、通じた！」とうれしくなります。通じないこともありましたが、その時は長瀬さんがすぐにサポートしてくれるので心強いです。

　将来、日本で子どもを育てていきたいと考えていて、外国人が出産する際のサポートや、育児していくことができるかなどを今、調べているところです。