静岡県富士宮市根原にあった旧建設省建設大学校朝霧校の施設を活用し、平成9年に開校したのが富士教育訓練センターです。建設企業の新入社員から熟練者まで、建設業に関するさまざまな教育を受けることができる場であり、富士山西麓の恵まれた環境で建設施工の知識や技術・技能を学ぶことができます。
INTERVIEW
富士教育訓練センター 責任者紹介
専務理事
菅井 文明 氏
日本語・文化・習慣についても
学んでもらう実習の場
当センターでは日本人への教育以外に、来日直後の技能実習生にも、日本語学習をメインに約1カ月間の教育を行っています。また、初めて日本で生活する方ばかりなので、日本人にとっては当たり前のルールや習慣を覚えてもらう場にもなっています。例えば、食堂では順番に並んで食事を受け取り、横入りをしないで待つ。そういった日本では常識的なことも、国によっては考え方が違うため、規律として学ぶ必要があるのです。
一日の始まりは朝礼から
安全意識を高めることが大事
特に力を入れているのが安全教育です。当センターでの一日は朝礼から始まります。ラジオ体操で体をほぐし、指差呼称を行う。これらは危険から身を守る上で必要なことでしょう。そして「あいさつ」です。コミュニケーションの基本であり、現場で連携して仕事をする上では欠かせません。それらが組み合わさり初めて身の安全を確保できると考えています。
「ものづくりは人づくり」の
心で育ててほしい
外国人の皆さんは働きたいという強い意欲を持って日本へやってきています。受入企業はその意欲をしっかり受け止めて、きちんと育てる環境をつくることが大切です。技能・技術を習得して仕事ができるようになることは、外国人自身にとって喜ばしいことであり、当然受入企業にとっても喜ばしいことです。受入企業の皆様にはどうか地道な「ものづくりは人づくり」の心で育てていただけますようお願いしたい。富士教育訓練センターとしても必ずお力になれると思います。
INTERVIEW
講師紹介
公益社団法人全国鉄筋工事業協会 実習生指導員
グェン タン ガン 氏
基本的な日本語教育や
生活についての指導を担当
公益社団法人全国鉄筋工事業協会で、技能実習生の指導員と特定技能外国人の支援員を担当しています。センターでは、来日した技能実習生に約1カ月の間、基本的な日本語の教育を始め、仕事の流れや安全教育、また日本での生活の仕方をサポートしています。
受入先で困らないよう
風呂の入り方までサポート
ベトナム人の場合、他人とお風呂に入る習慣はありません。洗濯機の使い方もわからない。しかし、当センターを出たらすぐに受入先での寮生活が始まります。彼らが困らないように、日本の生活様式をしっかり伝えることが私の仕事です。
INTERVIEW
講師紹介
教育訓練課 非常勤講師
町 美差恵 氏
言葉がわからなくても
理解すればうなずいてくれる
非常勤講師として鉄筋施工の基礎的な知識や技術を教えています。言葉が通じない人がほとんどなので、教えるのが難しいと思われがちですが、ジェスチャーや表情だけでも意外と伝わるものです。彼らも理解すると首を縦に振ってうなずいてくれます。
礼儀正しく、LINEで
新年のあいさつをくれる人も
日本の風習やマナーも覚えているので、廊下で立ち止まってあいさつをしてくれるなど、みんなが敬意を払ってくれます。なかには「LINEアカウントを教えてください」と言ってくる人もいて、メッセージで新年のあいさつが届いたことも。うれしかったですね。
Trainee`s VOICE
訓練生の声
ソンさん
(ベトナム)
日本で最先端技術を学びたい
ベトナムでは建設業はまだそれほど目立った職業ではありません。そこで、最先端の知識と技術を学び、いずれ母国の役に立てればと考え、日本へ行くことを決めました。
フンさん
(ベトナム)
安全対策の大切さを理解できた
日本はベトナムよりも安全に対する意識が高いのが印象的でした。現場で起こる事故は、自分だけでなく周りを巻き込むリスクがつきまとうので注意したいです。
カインさん
(ベトナム)
富士山やお祭りに行ってみたい!
日本語は難しいけど、今は学ぶことを楽しめるようになりました。日本でやりたいことの一つが旅行で、富士山には絶対に行ってみたい。お祭りも体験したいですね。
クオンさん
(ベトナム)
目標は特定技能になること!
センターの生活は厳しいと感じることもあります。でも、日本語や作業などできることが増えるにつれて、自信もついてきました。今は特定技能になることが目標です。
FACILITY
施設紹介
クレーン運転や玉掛け、鉄骨躯体の組立・解体などを行う。
雨天時の測量や墨出しの実習に利用。夜はレクリエーションの場にも。
クロス貼りやリフォーム施工など、内装工事全般の実習場。
あえて手書きで図面作成を行うことで製図の基礎力を養う。
男子寮、女子寮に分かれており、あわせて332名を収容できる。
約170名が利用可能。日用品やお菓子などの売店も併設している。
2023年9月 取材